小指標本

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お題:佐藤勝利くんのアイドル短歌にラブレターを書く

アイドル短歌結社「明星」第一回歌会、お題:佐藤勝利くんに寄せられた短歌たちについて、ラブレターを書こうと思います。案の定短く済ませられませんでした。

 

アイドル短歌結社「明星」についてはこちら

のんびり短歌結社「明星」発足のお知らせ - こみねもすなるだいありー

第一回歌会、お題:佐藤勝利 の様子はこちら。こみねさんが講評してくださってます。

短歌結社「明星」第一回歌会 お題:「佐藤勝利」 - こみねもすなるだいありー

 

勝利くんはその完成されきった美しいビジュアルからどこか無機質でメカニックな印象を受けます。

やわらかい、しっとりした、ぽむぽむふにふに、汗のかいた、というような言葉より、硬い、つめたい、こきんこきん、さらさらとした、というような男性的な言葉が似合うと思うのです。

そんなイメージが短歌にもあるなあと思ったのがこのふたつ!

 

 

一寸の虫も殺さぬ顔をして永遠の命研ぎ澄ませている

 

命を「研ぎ澄ます」という表現が勝利くんにぴったりだなあと思いました。研ぎ澄ます、という言葉にある切迫した一途さや白く光る刃物への連想がそのまま今の勝利くんにあてはまる気がします。(大人になると安定してこの焦燥感も含むぎりぎりの一途さは失われるかな、なんて思います。)

また「研ぎ澄ます」のが永遠の命というのも面白いなと思いました。命は永遠じゃないから、限りあるものでタイムリミットがあるから大切にしようと思える、頑張ろうと思えると歌うJ-POPがある一方で、永遠の命を与えられてもそれを研ぎ澄ますというのが、自分に与えられたビジュアル以外にも貪欲にトークやパフォーマンス作詞などに取り組んで自分に価値を生み出していった勝利くんらしいなと思えました。

一寸の虫、永遠の命が対比なんでしょうが、私は勝利くんは一寸の虫くらいなら殺しそうなイメージがあります。

 

 

 

夜が明ける前に急いで心臓を入れ替えなきゃねポジション・ゼロに

 

心臓を入れ替える、という言葉がメカニックで、さらにその心臓を移す場所が「ポジション・ゼロ」という暗号化されたミステリアスな地点、というのが相乗効果でかっこいい!と見た瞬間に好きになりました。

そして「急いで」という言葉が文字通りあわただしく仕事をするアイドルとしての彼ら、駆けるように過ぎてゆく17歳という年齢を想起させて素敵だなあ。

こみねさんの講評とほぼ同じ感想を抱いてます。

ぴったりした革のスーツを着た女スパイがウインクしながら言っているような女性的な雰囲気も同時に感じますが、佐藤勝利短歌だと思いながら読むと勝利くんが茶目っ気たっぷりに言っているようにも思えて面白いです。

 

 

 

佐藤勝利さんは17歳という年齢的にも小柄な身体的にも正しく「少年」ですが、そういう生身の少年以上に、過剰な物語の中の概念や役割、運命としての「少年」が似合います。

短歌からも耽美で、仰々しく、可憐な物語が感じられるなあと思ったのがこちら。

 

 

 

玉座にも十字架にもなるバミテのうえ前だけ向いて立てる才能

 

舞台の立ち位置を教えるテープをバミテといいます。

佐藤勝利さんは彼のためのバミテがあった場所からSexyZoneの絶対的0番と言われています。

(3210123というように番号つけられるため0番=センターです)

この玉座にも十字架にもなるバミテ、というのは他でもない0番に張られたバミテなんだろうなと思いました。

玉座、十字架という重く、日常からは遊離した遠い空想の国の政治や宗教を描くのに使われそうな言葉がしっくりくることに、センターの背負う運命の大きさを感じます。十字架はそれだけではそうでもないのに、玉座という光の単語と組ませると裁きや磔という影の意味を含んでくるんですね。新しい発見でした。

「うえ」は「前」を強調するためにひらがななのでしょうか。

私なら下の句変えて体言止めは避けたいかな?と思いました。

玉座にも十字架にもなるバミテの上 少年は前だけを向き立つ

とか

玉座にも十字架にもなるバミテの上 振り返らずに光を浴びる

とか・・・?いまいちですけど・・・。

体言止めは、止めに使った名詞が印象に残る手法なので、でもこの短歌の場合「才能」より「玉座」「十字架」「バミテ」が面白いのでちょっと変えてみたいなと思いました。

 

 

 

かたわれを持たない彼だけ知っている永遠という城のありか

 

センターに立つがゆえにシンメとなる相方を持たない勝利くん。そこから立ちのぼるような物語が素敵だなと思いました。

永遠の城のありかはかたわれを持たない彼だけが知ってるんですよ?!すごい!大長編の冒険ファンタジーの帯にしたいような短歌です。

 

 

 

浮遊するラヴとピースを噛み砕きアクリルの目で虚空を燃やす

 

かっこいい~~!!

アイドルの現場に行くと、私はとってもしあわせな気持ちになります。

ファンはアイドルが大好きで声援を送る、ステージに立つアイドルはその「好き」に答えるかのようなパフォーマしてくれて、時には応援するファンへ感謝の言葉をくれる。アイドルの現場とはアイドルとファンが愛の交換ができる場所だと思います。

またその空間にはそのアイドルが好きなひとしかいないという「ラヴ」があふれた場所です。そしてその空間はみんながしあわせな「ピース」フルな場所でしょう。

そうしてコンサート会場に浮遊するいろとりどりの女の子たちから生まれた「ラヴとピース」を噛み砕いて、飲み込んで、動力に変えて、「虚空を燃やす」ぞっとするくらい美しい少年、アイドルを生業とする少年・・・う、生まれる~!!物語が生まれる!!!

「アクリルの目で虚空を燃やす」という表現が想像しにくいものなんだけど、勝利くんを知っているならなんでか「わかる」、妙に説得力があるものに思えます。

あの目力なら、何もない空中からでも火を起こせそう、0から1を、もしくは新しい0を生み出せそう。

もぐもぐさんが詠まれた背景を呟いておられましたがそちらもとっても面白かったです。

 

 

 

 革命の名前を知って、少年はもう図書室に戻れない、夏

 

まるで寺山修司の短歌のようだと思いました。ということは私が大好きです!!

わが夏をあこがれのみが駈け去れり麦藁帽子被りて眠る

とびやすき葡萄の汁で汚すなかれ虐げられし少年の詩を

わが胸を夏蝶ひとつ抜けゆくは言葉のごとし失いし日の

ここらへんの寺山修司の詠んだ短歌と雰囲気が似ているなと思いました。

このころ(初期。修司18歳とかです)の寺山修司っぽい短歌、ということはみずみずしくて鮮やかで日常とはかけ離れたような物語性がある短歌、と言い換えられます。図書室という静で保守的な言葉と夏という対照的な言葉が美しいです。

革命という言葉が違和感なくすとんとハマるSexyZone、佐藤勝利さんはやっぱりすごいなあと思います。

 

 

 

最後に、先ほどとは逆の生身の、車が好きでハワイにテンションがあがるふつうの少年としての勝利さんについて詠まれたものかなあと思う短歌です。

 

 

 

ステージの上もLINEのアイコンも等価値に在る18の顔

 

ステージの上に立つことも、友達とのLINEのトークに浮上することも、勝利くんにとっては等価値に在る。在ってほしい。どっちも大切なことだよ。という短歌なのかなと読みました。18の顔っていうのは18歳の勝利くんの顔ですかね?来る10月30日で18歳になるからかな?

ただLINEの「アイコン」なので、ファンの女の子たちがLINEのアイコンにしてる勝利くんの写真、顔とも読めるかなとも思います。

LINE、アイコン、18とまだまだ若くて本当ならまだまだ頼りなくてなんだって許される現代っこだよな勝利くんもな、と思い出しました。

 

 

 

無邪気さをセロハンでくるみ飾りつけこれが僕だという頃も過ぎ

 

一つ前の短歌つながりでこちらも・・・。

デビューしたころ、美しい衣装を着てなにもわかりませんという顔をして無邪気さをラッピングしていればそれが価値になったころ。を過ぎて、アイドルとしてのスキルや先輩としての振舞いなどを身に着けていかなくてはいけない時期になったことを詠んでいるのかなと思いました。

セロハンという言葉がうまいな~と思いました。透けて見える。大人に差し掛かってきた今もっと透けない何かで無邪気さを包んで、別のものでこれが僕だと言わなければいけないのかもしれませんね。

 

 

 

踏み出した素足が赤に染まっても 振り向かないで今はそのまま

 

ほとんどこみねさんの解釈と同じです。

「踏み出した素足が赤に染まる」→「なにかを踏んでしまい切れて足が滲む」だと読みました。佐藤勝利短歌だと思うと踏んでしまうなにかとは薔薇のとげなのかなと空想します。薔薇を踏み歩んでいく、視覚的にも聴覚的にも美しいですが、その足にはとげが刺さっていたい。美しい面ばかり見せてくれてはいるけど、アイドルの歩く道というのも同じものかもしれません。でも振り向くことは許されない。前を見て進まなくちゃいけない。アイドル尊いです・・・。

足が赤くなるまで歩いたところで、踏み出したその足が歩きすぎで赤いのに気づいてしまっても今はまだ歩き続けて、とも読めるかもしれません。ちょっと強引かな。

「振り向かないで」は佐藤勝利くん作詞のソロ曲「同じ空の下」のサビ「僕らは前に進まなきゃ」を連想しました。

 

 

 

書きだしたら止まらなかった!楽しかったです。

今回特に好きだった歌は、

・玉座にも十字架にもなるバミテのうえ前だけ向いて立てる才能

・革命の名前を知って、少年はもう図書室に戻れない、夏

・無邪気さをセロハンでくるみ飾りつけこれが僕だという頃も過ぎ

でした。十字架も図書室もセロハンも私からは出てこなかった言葉で、それがすごく魅力的に使われていてハッとしました。

 

ちなみに自分の歌についてはこちら→「明星」で佐藤勝利くんのアイドル短歌を詠んだので解説してみた(http://enaca.hatenablog.com/entry/2014/08/22/003120

 

 

 

もうひとつ短歌になる前にネタ出しした「短歌にならなかった言葉たち」について書きたいのですが、大学の夏休みが終わってテスト前に入るので忘れたころに気力があればします。

「アイドル活動をボーイスカウトと呼ばれたっていい」とか思いついたのですが短歌にならなかった・・・。

第二回お題が「ジャニーズjr」だそうで、楽しみです。自分の歌の解説も、ラブレターも、これまた忘れたころでもいいから書けたらいいなと思います。

アイドル短歌、とってもとっても楽しいので輪がどんどん広がることを期待しています。